日本サッカーと「世界基準」

encyclopectorさんから紹介していただいた本を読んでみました。


日本サッカーと「世界基準」 (祥伝社新書 (046))

日本サッカーと「世界基準」 (祥伝社新書 (046))

素直に面白かったし、テレビの解説や新聞の辛口コメントでは表現しきれないセルジオさんの”サッカーへの愛情”と”日本サッカー界への想い”がとても伝わる一冊でした。タイトルでは世界基準となっていますが、セルジオさんが生まれ育ったブラジルを主な比較対象として、現在の日本の状況がいかに世界サッカー界の中で特異であり、その特異性ゆえに強豪国への道を歩めない矛盾を書いています。本文中にはっきりと言葉にしていませんが、セルジオさんが怒っているというよりは心の底から嘆いているように感じました。


以下は本文209Pから一部引用です。

最初から信じ込むよりも、むしろ疑ってかかるほうがいいのです。負ければ褒め、悪ければ悪いと言う。そうした姿勢が大事なのです。日本代表やJリーグの試合では、スタジアムに「僕たちは信じている」といったフレーズの横断幕を目にしますが、信じたところでダメなものはダメなのです。選挙でも、ある政治家に一票を投じて「あなたを信じていますから」だけで、果たしてその政治家が責任を持って働くでしょうか。大事なことはチェックすること。そうした姿勢がファンには求められているのです。


日本代表がドイツで惨敗した後に書かれていますからどうしても代表に関する記述が多くなりますが、代表が抱えている問題はイコールJリーグが抱えている問題でもあり、大きな意味で言えば日本サッカー界すべてに共通の問題である*1。育成指導や学校単位のクラブ活動や重複登録の禁止など、日本代表に興味にない人にも突き刺さる言葉が多数埋め込まれています。
また川淵氏を筆頭にする日本サッカー協会の問題やスポンサーやメディアやサポーターの問題など、優しい言葉でたくさんの問題点を指摘しています。たぶんこの本を読んでからセルジオさんの言葉を聞くと、きっと違った側面が見えてくるのでしょう。


8月9日の「川淵解任デモ」に参加した人は必読だと思うし、川淵氏を支持する人や自分はクラブサポだから協会や代表にはあまり興味がないという方まで、幅広いサッカーファンに読んでほしい一冊だと思います。


最後にこのフレーズを本文23Pから引用します。

わたしはなにも、特別厳しいことを言っているつもりはありません。仕事をしなかった政治家は選挙に落ちます。サラリーマンもボーナスや給料をカットされます。社長だって、株主から吊るし上げを食らいます。それが普通です。結果を出さなかったサラリーマンが、のほほんと居座っているような会社に、明るい未来はありません。

サッカー協会にも、応援するクラブにも、思い当たる人がいるのではないでしょうか。




以下は数少ないヴェルディサポ向けに…

振り返れば、圧倒的に強かった川崎時代のヴェルディも試合中は怒鳴りあいが日常茶飯事でした。勝とうと思ったら、これぐらいの厳しさがあって当然です。勝つために、精一杯自分を主張する。そうした過程があってこそ、チームワークは生れるのです。
勝つためには、ときには波風を立てなければいけません。波風を立てること自体が悪だと考えられているうちは、日本も強くなれないでしょう。試合がいざ始まったら、監督にできることは限られています。自分たちで何とかしなければいけません。

今のヴェルディは試合中に怒鳴りあってましたっけ? 怒鳴っているのは監督ぐらいだ…。

*1:日本文化が抱える背景的問題でもあるのでしょう。