天皇杯準決勝 浦和 - 鹿島

helguera2006-12-29

国立競技場に行ってきました。
抜けるような青い空に、両クラブのチームカラーの赤が映えるスタジアムでした。日差しは少しだけ温かかったのですが、ホーム浦和側からアウェイ鹿島側に吹き抜ける風は冷たく、時間の経過と共に体が冷えていきました。さて今日の試合の個人的最大の注目ポイントは、小野選手でした。浦和の中でも最近ベンチスタートが続いていた小野選手が、長谷部選手の累積警告による出場停止などもあり先発が確実視されていたので、とても楽しみにしていきました。準々決勝の磐田戦でも2得点を決めたこともあり、たぶん精神的に”のっている”はずの小野選手がどんなプレーを見せてくれるのか、期待をもって出かけました。


試合開始前のピッチ上に両チームの選手が出てきてアップを始めたわけですが、浦和の選手たちの中でもやはり小野選手のボールタッチは柔らかくて優しくて別格でした。たまたま今日の席が浦和側コーナー付近だったこともあり、浦和のシュート練習なども良く見えたのですが、腰が安定して足先は柔らか、でもヒットしたボールは力強く飛ぶ、『いいもん見たな』という感じでした。でも、まさか試合でも見られるとは。


試合はキックオフから鹿島の気持ちが見えてくるような立ち上がりでした。すでにリーグ戦を獲っている浦和に対し、鹿島のタイトルに対する渇望が選手たちの走るパワーになっているかのようでした。鹿島ボールになった時の前線の走り出しも早く、また中盤の押し上げも早く、最初のうちは反対側のゴール前ばかりが賑わっていました。しかし、時間の経過と共に浦和がペースを押し戻してきたように感じました。やはり小野選手とポンテ選手という、2人のゲームメイカーというかボールを落ち着かせることも出来るしダイレクトではたくこともできる選手がいるというのは大きいですね。その分、前線の枚数は永井選手一枚になってしまいますが、小野、ポンテ選手のところでボールが落ち着くことで山田選手や相馬選手が上がってくるし、速攻に入るときは時間をかけずにボールを配球できる。そしてあんなに楽しそうにプレーしている小野選手を見るのも嬉しかったです。


『前半は0−0かな…』と思い始めた前半の40分過ぎでしたが、あっけなくスコアが動きました。鹿島の選手がセンターサークル付近でボールを失い、そこから中央、そして左サイドに開いていた小野選手に素早くボールが渡ります。そこに詰めてくる鹿島の選手がいましたが、小野選手は詰めきられる前に右足を一閃、ボールは寄せてくるDFと飛んだGKの手をかすめ、サイドネットに吸い込まれました。スタンドから見ていても、『タイミングはそのタイミングしかない。でも、小野選手には今のコースが見えるのか…』と溜息が出るような美しい得点でした。普通の選手ならボールを止めて寄せてくるDFを交わして打ちたくなるようなタイミングとコースの消され方でしたが、見える小野選手にしか見えないコースがあるんですよね。”視野の広さ”なんて一言で言いますが、同じ情景を見ていても”そこに通せる技術がある人にだけ見えるコース”というものがあるのだろうと強く感じた先制点でした。


前半の終了間際には浦和にペースを握られた鹿島でしたが、1点ビハインドになってしまった後半頭から、さらにパワーをかけて浦和を追い込んできたように見えました。しかしやはり時間の経過と共に徐々に浦和ペースになりました。やはりワシントン、三都主、長谷部、田中達、田中闘選手がいないにもかかわらず、それでも中盤に小野、ポンテ選手の2人がいるチームというのは、かなり反則です。そこに相手が寄せてきても巧みなボールキープで相手選手を引き付けて、集まってきたところでプレッシャーの薄い場所にボールをパスを通して動かして、自分たちのボールキープの時間を作ってしまう。この2人のところでボールが獲れれば効果的なカウンターが仕掛けられると思うのですが、獲れないんだなぁ。


しかし、鹿島も試合が膠着してきた後半の20分過ぎ、選手交代を2人同時に行い試合のペースを取り戻そうとします。それに選手も奮い立ったのか、左サイドを突破してきた本山選手をたまらずにファールで止めてしまい、そこからのFKで鹿島が同点に追いつきます。この場面では飛び込んできた鹿島の選手のまわりに赤いユニフォームがいなかったですね。キーパーボールという判断だったのかもしれませんが、ここまでうまく試合を運んできたのに、この一瞬の隙で同点となってしまいました。
ここで勢いをさらに取り戻した鹿島が怒濤の攻撃を仕掛けましたが、勝ち越し点は奪えません。後半の30分過ぎに試合を見ながら『この時間で鹿島が獲れば鹿島の勝ち、そこを凌げば浦和の試合かな…』と当たり前の事を思っていましたが、本当にそのようになりました。


後半の35分過ぎに鹿島の猛攻に勢いがなくなり、『さあ、ここからが力比べかな』と思いかけた後半37分、あっさりと浦和が勝ち越してしまいました。ポンテ選手のシュートはDFに当ってコースが変わり曽ケ端選手にとっては不運なコースに飛んでしまいましたが、その前にサイドから中央まで切り込まれてしまった時点で勝負あったかな、という場面でした。しかし、今日の試合の浦和の中でずっと気になっていた小野選手とポンテ選手が得点するとは。この時期の天皇杯には出場しない外国人選手が多い中で、浦和は昨年のマリッチ戦湯といいポンテ選手といい、良い外国人選手に恵まれてますね。


終了間際に鹿島が最後の猛攻を仕掛けましたが、浦和のゴール近くまで行くもののゴールは割れず、そのまま2−1でタイムアップとなりました。確かに勝ち越されてからの残り時間は少なかったのですが、鹿島の選手に一発レッドが出るなど、良い試合だったのに最後の終わり方に後味の悪さが残ってしまいました。鹿島といえばJ開幕からの強豪で多少の浮き沈みはあるものの常に上位争いに顔を出すという印象のチームでしたが、今日の対戦相手の浦和に比べると選手が小粒になってしまった感は否めませんでした。そんなことを言っても、ナビスコ準優勝で天皇杯もベスト4なのですから、今でも強いクラブであることは確かなのです。が、別会場でのG大阪の決勝進出と合わせ、浦和G大阪の2強印象が強い2006年でした。