相変わらず面白いオシム監督の記者会見。

昨日の練習終わりの監督会見だと思いますが、相変わらず面白いと言うか、記者とかみ合っていないと言うか。
3/22練習後のオシム監督(日本代表)コメント J's GOAL

Q:今はチーム作りのどういう段階か?
「何を話せというのでしょうか。試合が終わった後ならどういう段階は話せますが、試合が終わっていないので話せません。今日お話できるのは、選手たちが非常に疲れているのに、そういう中で必死にトレーニングをしているということ。誰も不満を言わないでやっている。それはポジティブな面です。試合がどうなるかはまた別問題ですが。今、言えるのはそのくらいです」

質問者の質問がどの程度正確に再現されているのか分かりませんが、質問の範囲が広すぎますよね。「昨年の就任からアジアカップ予選を戦い昨年末で区切りがついたわけだが、今年の最初の試合となるペルー戦はオシム監督が考えるチーム作りのどういう段階にあたるのか。また、チーム作りは2010年を見据えて行っているのか、それとも直近のアジアカップを大きな目標としているのか、その辺も含めて聞かせて欲しい」というぐらい答えを限定させる質問でないと答えてくれないような気がします。

Q:ペルー戦に向けてはどうか?
「何を答えればいいのか分かりません。もっと分かるように質問してほしい。結果と内容のどっちが大事なのかとか、どの選手の注目しているのかとか、そういう質問があるでしょう。もちろん結果は一番大事でしょうが、どの選手を使ってどのような結果が出るかを確かめることも大事。私の考えを言わせてもらうと、勝てばもちろんいいが、結果にこだわることはないと思う。今回呼んだ選手がどのようなプレーをするかをトレーニングなどを通じて見極めたい」

これも同じですね。質問が曖昧すぎてオシム監督は答えてくれないでしょう。”Q:ペルー戦に向けてはどうか?”という質問では、”私も楽しみにしている”ぐらいで済ませてしまわれそうです。最初の質問と連続して曖昧な質問だったので、さすがに多くの言葉を返してくれましたが、聞く方も2年目になって少し緊張感がなくなってきたのでしょうか。

Q:結果より内容が大事ということですね。
「就任会見で話したことの繰り返しになりますが、日本人のメンタル面、日本人の特性をなるべく近づけられるようなクオリティの高いゲームができればいいと思っています。今までのトレーニングやゲームで、スピードやアグレッシブにプレーできることを確認できました。運動能力の高さも日本人の特性です。それらのメリットを活用して、世界の国と戦うこと。今回も1つのものさしになるチャンスだと思います。
(中略)
質問がよく分からなかったので、自分の考えを話しました(笑)」

ここでも「質問が良く分からなかった」と返しています。直前の受け答えで『結果と内容のどっちが大事なのかとか』と自分から水を向けているにも関わらず、まったく喰えない親父です。


ただ、ここからは受け答えが少し面白くなります。

Q:中村俊輔選手と高原選手を初召集しましたが?
「彼らは私のためにプレーしているのではなく、日本のためにプレーしているのです。そういう意味では初召集とは言いません」

Q:2人と何か話したか?
「私は日本語が話せないんで…。通訳なんか入れて話したくもないので(苦笑)」

Q:オシム監督の目指すサッカーの中での2人の役割は?
「他の選手と同じであることを強調したいです。2人にだけ期待すると負担が大きくなる。実際どんな結果が出るか分からないけれど、差別せずにノーマルに扱います。それはこれからも同じです。彼らはクレバーな選手たちだから、わざわざ遠くから呼ばれることの意味を十分理解しているでしょう。私にとってはいいプレーをするか、そうではないかの2つしかありません」

海外組として特別扱いしたがるメディアを牽制しつつ、この記事を読むだろう2人に対してもメッセージを発している。具体的に『こういうことを2人には期待している』と言われるより、『彼らはクレバーな選手たちだから、わざわざ遠くから呼ばれることの意味を十分理解しているでしょう』と言われる方がハードルが高いですよね。


そして、クライマックス。

Q:松橋選手を初めて呼びましたが?
「日本人であるということで呼びました(笑)。Jの試合を注目していれば、なぜ呼ばれたか分かると思います。日本の地方にもいい選手はいる。大分は日本じゃないんですか(苦笑)。近くに呼ぶことでよりよく分かると思います」

記者に向かって挑発してるんじゃないかと思うくらいストレートです(笑)。暗に「松橋選手がなぜ呼ばれたのか分からないくらいでは、サッカー記者として情けないんじゃないか?」ぐらいのニュアンスが込められているかのような受け答えです。特定のスター選手にだけ注目するのではなく、もっと広くJリーグを見て勉強しなさいという、記者向けのメッセージでしょうか。
「松橋選手の特徴は○○なところだと思いますが、現在の代表チームの中でその特徴をどのように生かそうとお考えですか?」というような、答えを限定できる質問の方が面白かったのかもしれません。問題は、松橋選手の特徴をスラスラと言える記者がいたかどうかですが。


最後に珍しく正直な説明がされているのが驚きです。

Q:今回、海外組を呼びましたが、練習の組み合わせには意味がありますか?
「普通に分けました。一緒にプレーできると思う人たちを一緒にしました。明日また代えてみます。誰と誰がいいコンビか、仲が悪いかは明日以降、分かるでしょう。
日本代表のある程度、核になるブロックはすでにできています。みなさんが意識しているかどうかは分かりませんが、よくご覧いただければGK、常に試合に出ているDFの選手、それ以外の2〜3人はほとんどの試合でプレーしています。そういうことだけでは記事が書けないというのかもしれませんが、彼らが代表の核になっています。それを軸にもっといいチームを作るということですが、それは簡単な仕事ではありません。
若い世代にもいい選手がいますが、誰を使うべきなのか決めるのも簡単ではない。下の世代の代表ではすでに呼ばれていますが、A代表として来て良かったのではないでしょうか。それ以外にもいい選手がいます。彼らは未来の希望だと思います」

具体的な選手名は挙げていませんが、オシム監督のチーム作りの方向をこんなにはっきりと口にした受け答えも珍しいのではないでしょうか。『軸になる選手を固定しチームの骨格を安定させて、その上に肉付けをする。肉付けの部分は試合開催日がAマッチデーかどうか、その大会の重要度など外的要因で決まる。しかし、チーム作りの根幹は揺らぐことがない』というメッセージと自信の宣言のようにも聞こえる言葉です。
そして若い選手を招集することによる効果を「未来の希望」という、何とも胸躍る言葉で言い表してくれました。


頓珍漢な質問も多いですが、久々に面白いオシム監督の会見でした。