朝日新聞における岡田さんインタビュー

id:encyclopectorさんからお題をいただいてしまったので(笑)、書きます。


岡田武史・代表監督「日本人の点の取り方見せたい」 朝日新聞(元記事)
オカダ Any given sunday さん


まず初めにお断りしておかなければいけないのは、オシム監督が倒れて以降、監督交代についてのやり取りの中で非常にすっきりしないものを覚えてしまったので、現時点での日本代表に対する興味が正直に言えば薄いという心境があります。ですから、12月に行われた合宿についてもほとんどフォローしていませんし、岡田さんの発言についてもまったくスルーしております。*1実際に1月の後半からテストマッチが始まり公式予選が始まったら徐々に引き込まれていくのだとは思いますが、Jリーグに在任中の監督をあのような形で奪った後の現状の中で、このような監督交代が行われたことに冷めきってしまっているというのが偽らざる心境です。


で、岡田さんの就任以降のコメントはほとんど初見のような状況ですが、初めにこの部分に違和感を感じました。

日本人の技術は世界でもトップレベル。運動量でも驚かれる。これをいかしたい。攻撃で、相手との接触を避けながら、狭いエリアでも人数をかけて抜け出していけるようなサッカーをしたい。

この部分について、『嘘ではないが事実でもない』という違和感を感じました。
日本の現状をどのように認識しているか、どのように感じているかはそれこそ人それぞれで千差万別だし、このような短い記事の中でどれだけ本意が語られているかは分かりませんが、それでも違和感があります。


まず、”日本人の技術は世界でもトップレベル”という部分ですが、確かに相手のいない環境においては日本人の技術レベルは世界でもトップレベルに近いと思います。相手が寄ってこられないFKや練習における技術などはかなり高いのだろうと思っています。その面では事実。ただし、真剣勝負の場で、相手が日本人選手を自由にさせまいとプレッシャーを掛けている状況の中でも同じような技術が発揮できるか、そのような状況でも日本人の技術は世界でもトップレベルと言えるのかどうかと考えれば違うと言わざるを得ません。思い出したくもない記憶ですが2006年のドイツでのオーストラリア戦の中で、体格の大きなオーストラリア選手にプレッシャーを掛けられ続けた中で繰り広げられた日本選手のプレーは技術的にもトップレベルと言えたのかどうか。ドイツでの敗戦は様々な要因が複雑に絡み合った結果であるにせよ、それでもあの状況の中で”日本人の技術は世界でもトップレベル”とは思えないです。


ドイツでの敗戦を受けて就任したオシム監督が掲げた”サッカーの日本化”というキーワードの中には、『日本人選手の優位性が活きるようなサッカー』という考えが含まれていたのではないでしょうか。相手のプレスの強い中に正直に突っ込んでいくには、まだまだ日本人選手の技術が足りない。ただ、プレッシャーの薄い状況なら日本人選手の技術の優位性を活かせる。であるなら、むやみに攻め急がず、自分たちのペースでボールを動かし、相手の薄いところを突く。見る方にはちょっとじれったいサッカーかもしれませんが、そのような部分が昨年のアジアカップなどでも見えていたのではないか。もちろん得点を取るためには最後の最後は相手のゴール前に行かなくてはなりませんが、その前の相手を崩す段階では最大限日本人選手の優位性を活かす。それは相手選手とのコンタクトが弱いところにこそチャンスがある。そのような方向に日本代表を方向付けていたのがオシム監督ではないでしょうか。


また”運動量でも驚かれる”という部分ですが、これは『単に1試合の総運動量』として考えるのか、『試合を決めるような勝負どころにおいての効果的な運動量』と考えるのかで意見が分かれるのではないかと思います。確かに相対的に見れば日本人選手の運動量は多いかもしれません。でも、例えば押されている試合の中でここぞというチャンスが訪れそうになった時にどれだけの選手が『ここが勝負どころだ』と腹をくくって前線に駆け上がれることができるか。『考えて走る』という言葉がありましたが、決して90分間ずっと走るという意味ではないと思います。結局は状況判断とリスクチャレンジとフィジカルの兼ね合いだとは思いますが、そのような部分において日本人選手が他に優っているとは思えない。ただ、元々『勤勉に走る』ような資質は持ち合わせている部分なので、そこに状況判断という引き金を埋め込もうとしていた道半ばだったのが2007年の日本代表の置かれた状況だったと認識しています。


以上のような私の認識している現状との違和感を踏まえると、引用部分の後半である”攻撃で、相手との接触を避けながら、狭いエリアでも人数をかけて抜け出していけるようなサッカー”ができるとは思えないのです。もちろんできたら素晴らしいことだし、できて相手を崩せるのなら文句はありません。でも、『それができない』と認識するところから始まったのがオシム監督の日本代表のチャレンジだったと思っています。
とりあえず、今はここまで(笑)。

*1:読んでスルーではなく、読む気がしません。