日本 - ヨルダン

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試合を見終えて眠りにつく時に、そんな言葉が頭をよぎりました。アジアのサッカーの公式戦と言えばもちろんワールドカップ予選もありますが、H&Aの戦いであることや比較的長期間にわたって試合があるなど、やはりアジアカップの独特の雰囲気とは大きく違います。アジアの偏狭な場所に多くのチームが集められ、時には暑さだったり時には湿度だったり時には劣悪なスタジアム設備だったり(時にはショボイ審判だったり…)、そんな数々の対戦相手とは別物とも戦わなきゃいけないアジアカップが4年ぶりに帰ってきました。


大会前のテレビやスポーツ新聞などは「2010ワールドカップベスト16の日本が…」というフレーズを多数使っていましたが、冷静に考えればあの時のチームと今のチームはまったくの別物であるわけで、現在の日本代表にとっては『監督が交代して3試合目の、オフ明けの選手と天皇杯まで戦った選手が混在している、合宿期間の短いチーム』でしかないわけですから、過大な期待はできないと思っています。もちろんそれでも現在の日本代表がアジアカップの中で弱い存在であるとは思いませんが、各試合を4-1とか8-1という驚異的なスコアで対戦相手を撃破していくようなレベルまでは成熟されていないでしょう。「アジアの戦いは難しい」というお決まりのフレーズを使う前に、冷静な目で現在の日本代表の立ち位置を見極める必要があると思います。


そんな状況の中で始まった日本代表のヨルダン戦ですが、前半の45分を見た後の感想は『軽い…』。足先だけでサッカーをやっているというか、手探りでソコソコのプレーをしているというか。とにかく戦う気迫とか、相手を吹っ飛ばしてもボールを奪うとか、ゴールを奪うために体ごと相手のゴールマウスに飛び込んでやるとか、そんな姿勢があまり見られなかったことが残念でした。何人か戦っている選手はいたと思いますが、チーム全体としてはソコソコの45分間を過ごしてしまったかと。失点の場面でもDFが守備はしていますが、寄せもソコソコだし、シュートを撃たれる前の5-10秒間を振り返ってみても、相手をぶち倒してもボールを奪うというような体ごとの守備というものが感じられなかったから失点はしょうがないと思います。DFの足に当たってシュートコースが変わった失点ではありましたが、ついてないと言うよりは軽い戦いをしてしまった前半の日本代表に与えられた当然の結果というように感じていました。だって、ヨルダンの選手からのほうが気迫が感じられましたから。


日本代表が本気で戦わなければならない状態にうまく追いつめられた後半の45分間でしたが、後半の入りもヨルダンのほうが点を取るという気持ちを感じられる入り方をしてきたのは意外でした。後半も日本代表は落ち着いて試合に入ったと思いますが、私がその時思ったのは『落ち着いた守備も落ち着いた攻撃も要らない。必死で守って必死で攻めろ!』ということでした。阿吽の呼吸でボールの動きも選手の動きも連動するような熟成されたチームではない今の日本代表にとって、点を取るために一番必要なのは体を投げ出してでもマイボールにするような必死さ、いくらヨルダン相手だとしても目がつりあがって審判に抗議するような戦う気持ちだと思ってましたから。そんなプレーがようやく日本代表に見られるようになったのは後半の30分を過ぎたあたりからでしょうか。さすがに出足の鋭かったヨルダンの選手も足が止まり、2点目を奪いに行くよりはこの1点を守りきろうと気持ちが負けてしまった状態になりましたね。対戦相手からヨルダンをみると、自分たちより格上の相手と戦って1点リードしている試合の終わらせ方の難しさを感じました。それだけ、日本代表がアジアの中では地力がついてきたということでもあると思いますが、最後の15分間の日本代表の攻撃は迫力がありました。


そして試合終了間近の後半47分にようやく同点に追いついたわけですが、もう何とも…。直後の感想は『すげー帳尻あわせって感じ。グループリーグはちょっと難しくしてしまったけど、チームの成長にはとても良い展開と思う。』というものでした。加圧トレーニングじゃないけれど、この試合の中でもチームの成長のためにはスコアがイーブンの状態よりも1点リードされた状態のほうがより攻撃の鋭さを増すためには役に立ったと思うし、グループリーグ残り2試合を戦ううえでも初戦に大差で勝つよりは引き分けで残り2試合きっちりと戦う必要性も増すしチーム全体も気持ちが引き締まるのではないかと思われます。


世界と戦おうがアジアで戦おうが日本のJリーグで戦おうが、結局のところサッカーで楽な試合などめったにないのだから、立ち上げたばかりの代表チームが気持ちを一つにして今後のこの大会を戦っていくには非常に良い初戦の結果になったのではないかと思います。ちょっと気になるのは遠藤選手が疲れているかなと感じることと、攻撃に高さのオプションが少ないこと。パワープレーになった時の迫力が足りないとは思いますが、そこはニアサイドに泥臭く飛び込んでいくような強い気持ちを期待しましょう。行け、日本!