女子WC決勝 日本 - アメリカ

いや、凄い試合でした。地力としてはアメリカが上回っているのがはっきり分かる試合でしたが、何せワールドカップ決勝という4年に一度の大舞台での一発勝負、何が起こるかわかりませんからね。でも、本当に奇跡を起こしてしまった澤選手達は凄かったけど。


今回の女子WCはちょっと忙しい時期に当たってしまって初戦のニュージーランド戦、3戦目のイングランド戦、そして今日の決勝と3試合しかリアルタイムで見ることができませんでしたが、そのとびとびの3試合の間でさえチームの成長を感じることができました。これは恐らくチーム内の雰囲気が良くて、監督のコントロールがうまくて、スタメンも控えもなくかなりまとまっているチームなんだなということが試合からも伺える感じがしました。だって、バラバラなチームなら試合毎に崩壊していくという現実を同じドイツで何年か前に見たばかりですからね。少し選手が入れ替わっても同じサッカーが継続できてさらにパワーアップできるというのは、監督を初めとしたチームスタッフの大会前からの準備がうまくいった結果でしょう。本当にお疲れ様でした。そしておめでとうございます。


試合内容については、あまり語ることがないような気がします。地力に勝るアメリカが押し込んでくるのを跳ね返す日本。開始直後はどうなることかと思いましたが、ファインセーブやバーにも助けられ試合開始直後を0点で抑えることができました。全てはここに尽きると思います。結果的にはアメリカに先制されてしまいましたが、それでも先制するまでにアメリカの選手達も随分と消耗しましたから日本が追いつく隙もできてきました。アメリカという強いチームが体力のあるうちに勝負を決めに来たけれど、結果として日本は消耗戦に持ち込むことができた、日本が勝つにはこれしかなかったのだろうと思います。アメリカの足が止まりだしてからは日本も自分達のリズムでパスをまわせるようになりましたが、なかなか綺麗にアメリカの守備を崩せるまでにはいたりませんでした。でも、いいんです、崩せなくてもゴールしてしまえば得点は得点ですからね、宮間選手の同点弾は泥臭いけどあそこにつめていたことへのご褒美です。もちろん左足のアウトサイドでしっかりとGKの動きの逆へ流し込んだ小技も見事でした。


アメリカの2得点は2点ともスピードがあってパワフルなビューティフルゴールでした。イングランドなどもそうでしたがやはり前への突進力やプレーの決断力、そしてシュートのパワーはどうしても敵いません。特に相手の動きがスピードに乗ってからではどうしても止められない。延長後半の終了間際に岩清水選手がレッドカードで退場になりましたが、今の日本がスピードに乗ってしまったアメリカ選手を止めるにはあれしかなかったと思います。スピードに乗る前にコースを限定したりできれば良いのでしょうが、相手は相手でこちらのマークを全力で外しにかかっているわけですから、なかなかそうもいきませんよね。あれだけの体格差のある相手に対して、2失点で済んだというのは上出来です。実はアメリカが先制した直後には、プレッシャーから開放されたアメリカ選手がのびのびとプレ−してきて0-3ぐらいで負けることも覚悟しましたから。アメリカがリードしたことに満足して一息ついてくれたので日本は随分と助かりました。


そして延長後半の澤選手の同点ゴール。もう鳥肌モノでした。パワーとスピードで敵わない相手に対し、俊敏性で優位なポジションをとって相手をかき回す。他の日本選手がプレッシャーからか全体的には慎重な動きを強いられている中で、あの一瞬の動きとアイデアには心底痺れました。早朝の日本中から雄叫びが上がった瞬間だったでしょう。ヘディングの競り合いでは分がない日本にとって、あんなプレーで起死回生の同点ゴールが生まれるとは予想だにしていませんでした。ゴール前で混戦になれば何か起きるかもとは思っていましたが、得点王を決めた1点は見事で日本サッカーの歴史に残るファインゴールでしたね。


PK戦はもう、海堀選手サマサマです。テレビの前で動ける森三中なんて言っててごめんなさい。アメリカ選手がいまいちPKが上手くなさそうだったということを差し引いても見事なPKストップの連続でした。日本の選手は落ち着いて決めてきましたが、永里選手の助走と表情は不安だったんですが、案の定外してしまいました。もう一人の途中出場の丸山選手も途中出場からの途中交代になってしまいましたが、交代で出た永里選手と丸山選手にはもっと思いっきり自分勝手に勝負していって欲しかったです。あの時間帯で出てくる選手に求められるのは思い切りだと思います。日本の選手に今後強く求められていくことはプレーの決断力や判断力だと感じていましたが、逆にGKの海堀選手はPK戦で思い切り良くやってくれました。


まだ一度も勝てていないアメリカに対し、公式記録では引き分けだと思いますが、それでもワールドカップの優勝は日本。こんなに気持ちの良いことはありません。まさかこんなに早く日本代表がワールドカップの表彰台でカップを高々と掲げる姿を目にすることができるとは思いませんでした。死ぬまでに一度くらいは日本代表がアジアカップではなくワールドカップで優勝カップを高々と掲げる姿を見ることができたらいいなぁと思っていましたが、このいろいろあった2011年に見ることになるとは、本当に感謝です。テレビや新聞などのメディアでは「なでしこメダル獲得!」などという言葉が踊っていましたが、自分にとってのワールドカップはやはりあのカップに価値があるのでどうもメダルに拘る表現がいまいちピンときませんでしたが、まさか金色のメダルを獲得するとは思いませんでした。あの豪勢な紙吹雪の中心に日本代表がいる、夢のような瞬間でした。


あとはサッカー協会、今までの規定に囚われずにワールドカップ優勝という快挙を成し遂げた選手達の苦労に対し、正当な評価と賞金をあげてくださいね。優勝賞金が男子だと3500万円で女子だと150万円というのは誰が考えても釣り合いが取れてませんよ。最低でも選手一人に1000万円ぐらいの賞金と優勝パレードの舞台ぐらい用意してあげてください。それだけのことをしてくれたんですから、ここは気前良くいきましょう。国民に夢と明るい話題を提供するのもサッカーが今できることですよ。選手達は最高の答えを出してくれたのですから、次に仕事をするのはサッカー協会です。
そうそう、今年のサッカー界のトレンドに乗るなら、優勝パレードでカップを落として壊すというのもあるかもね。