なでしこ五輪予選雑感

まずは五輪本大会の切符をきちんと獲得したこと、本当におめでとうございます。強かったっす、本当に。何度『この娘たち、すげぇ〜!』って思ったことか。派手さはないけど渋いししぶとい戦い方にしびれた大会でした。
とは言え、なにぶん試合時間が社会人にはきつい時間で、再放送も含めて見ることができた試合は韓国戦、オーストラリア戦、中国戦の3試合だけでした。ということで雑感です。


ワールドカップは優勝こそしましたが、あの時点でのなでしこ達には失うものは何もなくて、ある意味「勝てればラッキー」的な気持ちの軽さもあったでしょう。もちろん震災後の様々な状況や、澤選手など長期間に渡って日本の女子サッカーを引っ張ってきた選手には違った重みがかかっていたかもしれないけれど、日本代表としては負けて元々的なシンプルな立場だった。でも、今回の五輪予選は優勝後の大フィーバーを経て、さらになでしこリーグも満員盛況。ワールドカップチャンピオンなのだからアジアの大会は勝って当たり前的な目に見えないプレッシャーは相当あっただろうと思います。そして取材攻勢などの目に見えるプレッシャーや、フィジカルコンディションの調整不足など、注目を浴びていないときの大会に比べてはるかに準備は難しかったはず。そんな状況での4勝1分勝ち点13での1位通過は本当に頭が下がります。お疲れ様でした。


でも、実際に試合内容は厳しかった。相手が強いとかどうこうではなくて、自分達のチーム内に常に問題を抱えていたような気がします。
まずはフィジカルコンディション。キレキレに動けているのは川澄選手だけで、他の選手達はいかにも体が重そうだった。いまいち良いのか悪いのか分からなかったのが永里(姉)選手でしたが、傷だらけの勝利という感じのした大会でした。
次に感じたことはボールをつなぐ自分達のサッカースタイルに拘りすぎた挙句、自分達のゴール前などの危険な地域でも軽いプレーが見られたこと。親善試合や練習試合ではなく、結果が全ての公式大会の予選だからこそ、自陣ゴール前などのプレーははっきりとしたクリアでも良かったのではないかと思います。結果的に失点にならなくても、自分達のDFのプレーの中でヒヤリとするプレーが多かったように思います。時間帯によるメリハリやプレーエリアによるメリハリを考えたプレーができるはずです。トリッキーなパスやプレーは自陣ではなく相手のゴールに近い所で見せてくれ。
あとは大事な所でのパスがほんのちょっとずれることが気になりました。そこで1mずれずにピタリと足元に入ったらチャンスになったり、走っている選手の後ろではなく前に入ればスピードに乗って相手のDFラインを突破できたりと、歯がゆい思いをするパスのズレも気になりました。でも、オーストラリアvs中国の試合を見ていたら、日本のズレが1mならその試合では3〜4mぐらいズレてたけど。


そんな内容でも結果を出してしまうのだから、今のなでしこ達は本当にメンタルの強さが凄いのだろうな。でも、ワールドカップと五輪予選の中で代えの効かない選手が何人かいることも露呈してしまったけれど。特に川澄選手の攻撃での貢献はもし居なかったらと思うとぞっとするぐらいですね。ボールを引き出す動きや、視野の広さを感じさせるパスセンス、そして豊富な運動量と、ゴール前での怖いくらいの落ち着きぶり。あのシュートを冷静にGKに当てずに流し込む技術と精神力は日本の男子の選手達を見ても香川選手ぐらいしか思いつきません。今大会のMVPを選ぶなら(全試合は見ていないけど)個人的にはダントツで川澄選手です。
とにかく大会後はメディアも少し静かにしてあげて、休む時間を彼女達にあげて欲しいと思います。この数ヶ月で彼女達が成し遂げたことを考えたら、それぐらいの休養を与えてあげてください、お願いします。



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