日本 - イラク WCアジア最終予選

埼玉スタジアムに行ってきました。
結果は1-0の完勝で勝ち点3を取って満点の試合だと感じました。おそらく試合内容に不満を抱く人もいると思うけれど(セルジオさんとかね)、点差は1点差の最少得点差なのですが、本当に負ける気がしなかった。もちろん勝負事ですからセットプレーから失点したりカウンターを喰らって失点する可能性はありました。実際に際どい場面もあったし。でも、やはり俯瞰してみていると負けるはずのない相手というイメージしか湧いてきません。1-0という勝敗の差を分けたのは小さなディテールの差なのですが、そのステージに上がるためにはサッカーの基礎体力のようなものがないとたどり着けない場所だと思っています。今日のイラクも確かに良いチームでした。でも、”良い”のレベルがドーハの頃の20年前の日本代表と同じような”良い”チームであって、試合もよくやったけど惜しかったねという試合までしかいけない。1-0の試合をきちんと1点差で勝ちきるための基礎体力とディテールに圧倒的な差がある相手でした。


今日はメインアッパーのアウェイ側コーナーフラッグの延長線上みたいなところから見ていたので、ちょっと選手の誤認識があるかもしれません。さすがに香川と岡崎は間違わないのですが、清武と岡崎の見分けには自信がない。眼がそんなによくないので8番と9番とか、2番と22番の見分けが厳しいのです。体格やプレースタイルに明確な違いがあったり、髪の毛やスパイクの色が違ったりすれば分かりやすいのですが、清武選手などスタジアムで生で長時間見ていない選手は咄嗟に分からないです。何試合もスタジアムで見ている選手は良くわかるのですが。ということと微妙に間違ってたら、ごめんなさい。


試合開始直後こそ日本のストロングポイントを消しにきたイラクにペースを握られましたが、そこを凌いでからは圧倒的に日本の実力を見せつけたと感じました。コーナーキックからのヘディングシュートやカウンターからのシュートなどイラクにも惜しい場面がありましたが、日本のピンチは瞬間的に現れる尖ったピークのようなピンチで、一方日本のチャンスについては攻撃がイラクのゴールに迫るのは高潮のように水面全体が盛り上がっていくような二次攻撃、三次攻撃と立て続けに相手ゴールを襲うチャンスだったと感じていました。そのあたりが先に書いたようなサッカーの基礎体力というかチームの総合力のような部分の差だと思っています。


例えばこの試合は直前になって日本の攻撃の中心の一人である香川選手が欠場、その前から出場停止で内田、今野選手を欠いている。鉄板だったフィールド10人のスタメンのうち3人がいなくても、今の日本代表は100点から70点に落ちるわけではなく、100点から90点になるぐらいでチーム力をキープできる。また攻撃の中で日本のキープレイヤーを徹底的にマークされて封じられても、他の選手が追い越したりほんの少しのマークのズレを利用してボールに攻撃にうまく絡んでいける。香川欠場で本田、遠藤をマークで封じても岡崎、清武の辺りで攻撃を作れてしまうし、決定的なチャンスも作り出せる。こんなディテールの差が結局は大きな差になって、対戦相手から見るとあとちょっとなのに勝てないように見える。でも本当はあとちょっとではなく、日本代表がここまで到達するのに20年かかりました。これは代表強化だけの20年ではなく、地域の若い世代からJリーグまで、日本サッカーの力を結集した20年をかけてようやくたどり着けた場所だと思っています。


もちろん慣れないメンバーの中で単純なマークのズレやDFラインがボールを持っても前の選手が動き出したり動き直したりしないので単順位縦に蹴って自らボールを失ったり、コンビネーションがうまくいかずパスがズレたりと日本らしくないミスも随所にある試合だったのは事実です。決して日本代表のベストな試合だとは思いません。でも、それでもなお今日のイラクには負けるとは思わなかった。
また、日本の得点場面ですが、あれにはニヤリとしてしまいました。得点につながるスローインが目の前だったのでとてもよく見えたのですが、これだけのメンバーを揃えつつ、それでもあの位置のスローインからの連係で相手の裏を取ってクロスに飛び込む練習をしている日本代表の練習風景を想像すると、ちょっとにやけてしまいました。反対側からのスローインでも狙ってましたから、用意したプレーなんだなということがすぐに分かりました。結局はその発想が勝敗を分けたのですけどね。


このBlogを見ている方が私と同世代だとしたら、20年前にドーハでロスタイムにあんなことがあったころ、日本のサッカー選手がインテルのレギュラーSBだったり、マンチェスターユナイテッドに移籍したり、代表スタメンの半分以上が欧州クラブの所属だったりなんてこと、想像できましたか? 私は夢にも思っていませんでした。欧州サッカーは三菱ダイヤモンドサッカーの番組の中だけの世界でした。だって、その頃はワールドカップに出場することが夢だったのですから。良い選手を集めて、強化試合を組んで錬度を上げて、良い試合をして尖ったピークをその試合にあわせてきてようやく勝てる試合の連続でした。SB一人が怪我しても大騒ぎで結局はそのピースを埋める選手を見つけられなかった時代ですからね。今のイラク代表と当時のイラク代表は、その当時の日本代表と同じイメージです。でも、日本は20年かけて、ようやく基礎体力が出来てディテールの差で勝負ができるところまで辿り着いた。今のアジアの中で同じ所まできているのはオーストラリアだけだと思っています。ただ、国内リーグの充実度では日本の勝ちだと思っていますけど。


岡崎の突破、清武のチャレンジ、本田のキープ力、前田の動き出し、遠藤のパス、長友のスピード、駒野のクロス、川島のセーブ。どれかを消されても他のどこかで勝負が出来るし、ベンチにもハーフナーの高さや原口のドリブルなど、まだまだ武器も持っている。やっぱり、今のイラクごときには負ける気がしないのですよ。決して対戦相手をリスペクトしていないわけではありません。国内の政治状況が落ち着かないのに頑張っていると思います。でも、やはりサッカーは国内リーグや育成も含めた国力の勝負だとするなら、今の日本はイラクに負ける気がしない。セルジオさんは心配性だから文句ばかり言うと思うけど、私は今日の試合を見ていてそのようなことを感じていました。


直近の世界大会を考えても、U20女子W杯3位、女子五輪2位、U23男子五輪4位、女子W杯優勝、男子W杯ベスト16(PK負け)。瞬間的なチーム力の結果で出ている成績ではなく、日本のサッカーの国力で導き出した結果だと思っています。今日のイラク戦は1-0の最少得点差の試合だったけど、ようやく日本はこのステージ(サッカーの基礎体力がついてディテールの差で勝利するステージ)にまで20年かけて辿り着いたんだと、20年前の因縁の相手との試合であらためて強く感じました。別に監督が因縁の相手だったから、とかじゃないですからね、全然。