親善試合 フランス - 日本

このところ個人的に忙しい季節でライブで見るのは諦めて録画をして夜に見たのですが、これはライブで見た人が羨ましい試合でしたね。親善試合とは言えフランスに初勝利をする日本代表をライブで見たこともあるけど、85分間の鬱憤をあのカウンター攻撃一発で解消するどころか歓喜に変えるその瞬間を筋書きを知らずに見ることができた、ただそれだけで羨ましい。


所詮親善試合であることは確か。でも、フランスにとってはワールドカップ予選を控えた大事なテストマッチだし、日本にとっては普段アジアの枠を出て闘うチャンスのない試合が多い中での貴重なアウェイ試合。フランスは温存だし日本は怪我人を欠いての試合、事情は違えどもベストメンバーと言えない中での、それでも大観衆を飲み込んだフランスホームの試合ですから、親善試合の中でもけっこう真剣勝負の試合でしたね。日本にとっては相手に不足はない。


前半はホームの大観衆に後押しされ、またレギュラーとは言い切れないフランスのスタメン選手が張り切って攻めてきたこともあり、日本は防戦一方でしたが、それでも本格的に危なかったのは数えるほどでした。もちろんセットプレーの連続でほんの一瞬マークを外せば即失点でしたが、この前のイラク戦の方がコーナーキックでマーク外してたし危なかったし。それに比べればこの試合は攻められてはいるけどやられてはいない前半45分という感じでした。時折日本もパスをつないで相手陣内まで持ち込むこともできましたが、フィニッシュまではいけなかった。この辺りは対フランスがどうこうよりもレギュラーの前線3枚の本田、前田、岡崎を怪我で欠く連係不足は否めない感じでした。
右サイドの清武、酒井宏は焦って前に勝負してボールを失う。左サイドの香川、長友は孤立してボール失う。そして中央は本田がいないからボールを失う。中央である程度キープして時間を作ることが出来る本田の存在感が、いなくなって際立つ中央からの攻めでした。ハーフナーももう少しキープできたらねぇ。


後半はフランスもメンバーを変えてきたり、また最初から飛ばしてきたのに日本を仕留められなかったからか足が止まってきたので、日本が主導権を持ってボールをまわすことができるようになりました。もちろん五分五分というぐらいだけど、それでも長友の左サイドを基点にしてクロスを入れることが出来るようになったり、中央に移動した香川が相手の隙間でボールを受けて前を向けるようになったり。特に右から清武、香川、乾と並んだチビッコトリオはフランスのDFも止めにくかったんじゃないかな、チョコマカして。
そしてあのカウンター。直線的に見事に決まったカウンター攻撃だったけれど、スタメンから90分近く闘っている今野や長友の全力疾走にフランス選手がまったくついていけていないことが最高だった。体格では負けるけどスタミナでは負けないぜっていう日本の面目躍如って感じでした。自陣のコーナーキックでも2枚残していた香川、乾に加え、右から長友、内田、香川と3枚並んでフランスゴールに迫り、最後には中央の香川とファーサイドの乾を加えて5枚に増えた日本の白いユニフォームがフランスの青いユニフォームを圧倒して飲み込んでいく様は爽快でした。ライブで見てたら早朝だけど大声で叫んだんだろうな。


親善試合ですからフランスに勝ったからといって何か日本サッカーの歴史が変わるほどの出来事だとは思いません。でも、日本のFIFAランクは決して過大評価ではなく20位前後の実力が本当にあることは証明できたのではないかと思います。順位は今ぐらいでもう充分で、あとはワールドカップのたびにベスト16は妥当で充分実現可能な現実的目標として、さらにベスト8やベスト4を狙う。ワールドカップに出ることが目標でグループリーグに勝つことが目標だった時代、フランスに0-5で負けてた時代に比べると、本当に思えば遠くへきたもんだ。

日本 - イラク WCアジア最終予選

埼玉スタジアムに行ってきました。
結果は1-0の完勝で勝ち点3を取って満点の試合だと感じました。おそらく試合内容に不満を抱く人もいると思うけれど(セルジオさんとかね)、点差は1点差の最少得点差なのですが、本当に負ける気がしなかった。もちろん勝負事ですからセットプレーから失点したりカウンターを喰らって失点する可能性はありました。実際に際どい場面もあったし。でも、やはり俯瞰してみていると負けるはずのない相手というイメージしか湧いてきません。1-0という勝敗の差を分けたのは小さなディテールの差なのですが、そのステージに上がるためにはサッカーの基礎体力のようなものがないとたどり着けない場所だと思っています。今日のイラクも確かに良いチームでした。でも、”良い”のレベルがドーハの頃の20年前の日本代表と同じような”良い”チームであって、試合もよくやったけど惜しかったねという試合までしかいけない。1-0の試合をきちんと1点差で勝ちきるための基礎体力とディテールに圧倒的な差がある相手でした。


今日はメインアッパーのアウェイ側コーナーフラッグの延長線上みたいなところから見ていたので、ちょっと選手の誤認識があるかもしれません。さすがに香川と岡崎は間違わないのですが、清武と岡崎の見分けには自信がない。眼がそんなによくないので8番と9番とか、2番と22番の見分けが厳しいのです。体格やプレースタイルに明確な違いがあったり、髪の毛やスパイクの色が違ったりすれば分かりやすいのですが、清武選手などスタジアムで生で長時間見ていない選手は咄嗟に分からないです。何試合もスタジアムで見ている選手は良くわかるのですが。ということと微妙に間違ってたら、ごめんなさい。


試合開始直後こそ日本のストロングポイントを消しにきたイラクにペースを握られましたが、そこを凌いでからは圧倒的に日本の実力を見せつけたと感じました。コーナーキックからのヘディングシュートやカウンターからのシュートなどイラクにも惜しい場面がありましたが、日本のピンチは瞬間的に現れる尖ったピークのようなピンチで、一方日本のチャンスについては攻撃がイラクのゴールに迫るのは高潮のように水面全体が盛り上がっていくような二次攻撃、三次攻撃と立て続けに相手ゴールを襲うチャンスだったと感じていました。そのあたりが先に書いたようなサッカーの基礎体力というかチームの総合力のような部分の差だと思っています。


例えばこの試合は直前になって日本の攻撃の中心の一人である香川選手が欠場、その前から出場停止で内田、今野選手を欠いている。鉄板だったフィールド10人のスタメンのうち3人がいなくても、今の日本代表は100点から70点に落ちるわけではなく、100点から90点になるぐらいでチーム力をキープできる。また攻撃の中で日本のキープレイヤーを徹底的にマークされて封じられても、他の選手が追い越したりほんの少しのマークのズレを利用してボールに攻撃にうまく絡んでいける。香川欠場で本田、遠藤をマークで封じても岡崎、清武の辺りで攻撃を作れてしまうし、決定的なチャンスも作り出せる。こんなディテールの差が結局は大きな差になって、対戦相手から見るとあとちょっとなのに勝てないように見える。でも本当はあとちょっとではなく、日本代表がここまで到達するのに20年かかりました。これは代表強化だけの20年ではなく、地域の若い世代からJリーグまで、日本サッカーの力を結集した20年をかけてようやくたどり着けた場所だと思っています。


もちろん慣れないメンバーの中で単純なマークのズレやDFラインがボールを持っても前の選手が動き出したり動き直したりしないので単順位縦に蹴って自らボールを失ったり、コンビネーションがうまくいかずパスがズレたりと日本らしくないミスも随所にある試合だったのは事実です。決して日本代表のベストな試合だとは思いません。でも、それでもなお今日のイラクには負けるとは思わなかった。
また、日本の得点場面ですが、あれにはニヤリとしてしまいました。得点につながるスローインが目の前だったのでとてもよく見えたのですが、これだけのメンバーを揃えつつ、それでもあの位置のスローインからの連係で相手の裏を取ってクロスに飛び込む練習をしている日本代表の練習風景を想像すると、ちょっとにやけてしまいました。反対側からのスローインでも狙ってましたから、用意したプレーなんだなということがすぐに分かりました。結局はその発想が勝敗を分けたのですけどね。


このBlogを見ている方が私と同世代だとしたら、20年前にドーハでロスタイムにあんなことがあったころ、日本のサッカー選手がインテルのレギュラーSBだったり、マンチェスターユナイテッドに移籍したり、代表スタメンの半分以上が欧州クラブの所属だったりなんてこと、想像できましたか? 私は夢にも思っていませんでした。欧州サッカーは三菱ダイヤモンドサッカーの番組の中だけの世界でした。だって、その頃はワールドカップに出場することが夢だったのですから。良い選手を集めて、強化試合を組んで錬度を上げて、良い試合をして尖ったピークをその試合にあわせてきてようやく勝てる試合の連続でした。SB一人が怪我しても大騒ぎで結局はそのピースを埋める選手を見つけられなかった時代ですからね。今のイラク代表と当時のイラク代表は、その当時の日本代表と同じイメージです。でも、日本は20年かけて、ようやく基礎体力が出来てディテールの差で勝負ができるところまで辿り着いた。今のアジアの中で同じ所まできているのはオーストラリアだけだと思っています。ただ、国内リーグの充実度では日本の勝ちだと思っていますけど。


岡崎の突破、清武のチャレンジ、本田のキープ力、前田の動き出し、遠藤のパス、長友のスピード、駒野のクロス、川島のセーブ。どれかを消されても他のどこかで勝負が出来るし、ベンチにもハーフナーの高さや原口のドリブルなど、まだまだ武器も持っている。やっぱり、今のイラクごときには負ける気がしないのですよ。決して対戦相手をリスペクトしていないわけではありません。国内の政治状況が落ち着かないのに頑張っていると思います。でも、やはりサッカーは国内リーグや育成も含めた国力の勝負だとするなら、今の日本はイラクに負ける気がしない。セルジオさんは心配性だから文句ばかり言うと思うけど、私は今日の試合を見ていてそのようなことを感じていました。


直近の世界大会を考えても、U20女子W杯3位、女子五輪2位、U23男子五輪4位、女子W杯優勝、男子W杯ベスト16(PK負け)。瞬間的なチーム力の結果で出ている成績ではなく、日本のサッカーの国力で導き出した結果だと思っています。今日のイラク戦は1-0の最少得点差の試合だったけど、ようやく日本はこのステージ(サッカーの基礎体力がついてディテールの差で勝利するステージ)にまで20年かけて辿り着いたんだと、20年前の因縁の相手との試合であらためて強く感じました。別に監督が因縁の相手だったから、とかじゃないですからね、全然。

東京ヴェルディ 川勝監督辞任に関して思うこと

今日、辞任という形で川勝監督が2年半指揮を執ったヴェルディを離れることになりました。最終的にこのような形になるまでクラブフロントと監督の間にどのようなやりとりがあったのかは部外者である私にはまったく分かりませんし、恐らく今後も事情が漏れてくることはないでしょう。ただ、解任ではなく自らが辞める辞任であるあたりが、様々な意味を持っているような気はします。財政的に厳しいクラブの監督を引き受けて、まがりなりにも3シーズンとも昇格を争えるような位置にはつけてくれたこと、これは感謝しかありません。でも、ここ1カ月ぐらいのチームの流れを見ると辞任(または解任)は時間の問題だったような気はしますし、10試合を残してリーグ戦の短い中断をはさむ今がラストチャンスだったのだろうと思います。


私自身スタジアムに毎試合行けるような熱心なサポではありませんし、スカパーの録画ですら全試合見ているわけでもない。でも、ヴェルディというクラブを定点観測していた中で川勝監督について感じていたことを書き残しておきたいと思います。
まず川勝監督について一番大きく感じていることは、監督という枠の中にいる人だけど、指導者であって勝負師ではない、と2年半ずっと思ってきました。もし川勝監督がユースチームの監督だったとしたら、これほどの適任者はいないと思います。サッカー選手として育てる前に、その選手を人間として育てるところから始める素晴らしい方だと思います。でも、J2というカテゴリーとはいえプロクラブのトップチームの監督なのだから、やはり成績という結果が求められるし、時に素晴らしい内容で負けるよりもつまらない内容でも勝つ方が評価されるのは当然のこと。評価の軸は監督を雇ったクラブフロントが求めるものによって決るので、監督が指導者だからダメだというわけではありません。1年目や2年目は羽ばたく準備の年だからフロント的にはOKだったのかもしれない。でも、勝負の3年目は待てなかった。


就任1年目だったと思いますが、FWの平本一樹選手を執拗にサイドバックで使っていた時期がありました。守備の仕事をやる中で相手選手のこういう動きはやっかいだとか教える意味だったことは分かります。でも、それは練習試合やユースの時代ならともかくリーグ戦の公式戦を使ってやることかと呆れたのを覚えています。平本選手にとっては貴重な体験だったかもしれませんが、その時期に勝利という結果は余り出ませんでした。
今季開幕当初は20歳の小林祐希選手をキャプテンに任命しました。これも技術的にはまったく問題のない選手だけどコミニュケーションに問題があるならキャプテンにすることで自らも成長するだろうし、まわりのベテラン選手も自らの経験で若いキャプテンを盛り立てていって欲しい、という監督の意図は痛いほどに分かります。でも、結果的には小林選手はあまりスタメンでは使われず、プレッシャーから逃れるように磐田に移籍してしまった。
この二つのことはたまたま裏目に出たことであって、阿部選手などは順調に育ってますから全てが下手を打ったとは言いませんが、やはり勝負師ではなく頭の中が指導者、育成者としての価値観の方が強かったのだろうと思ってます。


シーズンの前半を棒に振る覚悟で選手を育てて、シーズン半ば過ぎにようやくチームが完成して、シーズン後半に少しは追い上げるけど終盤に息切れして5位、というのが1.2年目でした。それでは苦労して育てた選手を使って来季こそとなるわけですが、J2の貧乏クラブである今のヴェルディではJ1や海外に出ていく有望選手を引き留める力も弱く、次のシーズンはゼロからやり直し。そんな悪循環を今年こそ断ち切れるかという予想以上の立ち上がりを見せた今シーズンでしたが、杉本選手のレンタル終了と小林選手の移籍に伴う新たな選手補強をしたあたりからチームがあっという間に崩れてしまいました。


もともとチームを作るのに時間がかかる監督でしたが、今年はシーズン途中でチームを立て直さなければならなくなったけど、立て直すどころか崩壊してしまった、というのがこの1ヶ月間だったと思います。今年は珍しくフロントも選手が抜けた穴を埋めるべく迅速に補強に動いたけれど、抜けた穴にピタリとはまるピースではなかったためによりバランスを崩し、ピッチ上の選手たちは試合中にどう動けば良いか分からなくなり、監督も短時間で立て直せなかった。このまま川勝監督に立て直しを任せたらチームが出来上がるのはシーズン終了後になってしまうが、今季の3〜6位はプレーオフというレギュレーションを考えると育成型の監督よりも目先の試合で結果を出せる監督の方が昇格への可能性は高いかもしれない。


川勝監督の頭の中には理想のサッカーが明確にあった。パスをつないで人もボールもよく動いて相手を崩して得点する、自分たちが主体のサッカー。でもヴェルディというクラブはそれに合う選手を短期間で呼び集められるような金満クラブでもないし、そのような選手が育つのを何シーズンも待てるような経営的に余裕のあるクラブでもない。手駒が少ない時期に川勝監督がやりくりして戦ってくれたことには十分感謝しているけれど、今年は結果を出さなきゃいけないシーズンだった、プロの監督として。
外国籍選手のことだけをとっても、この3年間使える外国人選手を呼べなかったクラブの問題なのか、外国人選手を使いきれなかった監督の問題なのかは分かりません。今シーズン途中の補強の失敗も監督のせいではなくクラブに原因があるのかもしれない。でも、シーズン途中で何かを大きく変えるなら監督交代しか手はない。残念なことだけど、このタイミングでの監督交代は必然だったと思います。


繰り返しになりますが、このような形でのお別れですがそれでも川勝監督には感謝の気持ちの方が大きいです。今季はシーズン中に首位にも立って夢をみることもできた。でも、やはり勝負弱い監督であったことは確かだし、それは目先の結果よりも夢を追う、リアリストではなくロマンチストの監督だったからなのだと思ってます。今はプレーオフ圏内からも落ちちゃってますが、仮に川勝監督のまま6位以内に入ってプレーオフに臨んだとしても、この勝負弱い監督ではとても勝てる気はしなかった。以前アウェイゴール2倍ルールを知らずに入れ替え戦に臨んだ実績のある監督だし。次戦の天皇杯は代行監督で臨むようですが、育成とか自分たちのサッカーとかに捉われず、目の前の試合に勝つ、それを最優先する監督に残り試合を委ねていただきたい。そしてチームにはこの辞任という決断をした前監督の為にも結果を出して欲しいと強く願っています。

ロンドンオリンピック サッカー日本代表 解説者 番外編

まったくのオマケで戯言ですのでお許しを。まあ私のエントリー全てが戯言レベルですが。


まずは宮本さん。非常に理知的で分かりやすい解説だった。ただ、その分かりやすさは日頃からサッカーを考えながら見ている人にとっての面白さで、オリンピックでだけサッカーを見る人にも伝わったかどうかは分からないところです。スカパーなどの金を払ってでもサッカーを見たい人にはハマるけど、民放地上波なら松木さんのような存在の方がハマるのかも。たぶん松木さんと究極の対極にいるのが宮本さん。

三浦アツさん。声質がちょっと聴きとりにくい。でも、技術的な部分は面白かった。現地が三浦アツさんでスタジオが大竹さんだと兄妹なのか姉弟なのかが気になってしょうがなかった。

長谷川健太さん。歯に衣着せぬ言い方が気持ち良い。実況が誘導しても違うことは違うと言いきれる強さがあって、面白かった。個人的には次期U23監督をして欲しい。

川上さん。話し方が物議を醸す。前回のワールドカップでは大竹さんの話し方が物議を醸したような気もするので、女性の解説者にとっては避けては通れない部分なのか。声質の好き嫌いははっきりと分かれるところ。私は今一つ…(以下自粛)


これ以外の人が解説で喋ってたとしたらごめんなさい、まったく印象にも残らなかったのか、試合が面白すぎて記憶に残らなかったのかどちらかで他意はありません。基本サッカー中継はNHKで見てたので民放のスタジオで誰が喋ってたのかはほとんど知りませんし、見てませんでした。ただオリンピック期間中の前半にテレビ朝日の朝の番組に出ていた松木さんは最高に面白いエンターテイナー*1だったことだけは確かです。


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*1:エンターテイナー(もしくはエンターテナー)は、自身の特技、演技、芸、パフォーマンス、マジック、音楽などを披露し、観客を楽しませる或いは笑わせることで接待するコメディアン、ミュージシャンを指す。ウィキペディアより

ロンドンオリンピック サッカー日本代表 女子

銀メダル、本当におめでとうございます。
欲しかった金メダルにはあとちょっとで届かなかったけれど、決勝の内容を考えても金メダルに勝るとも劣らない銀メダルだったと思います。


こちらの女子日本代表は男子と違ってワールドカップ前からほぼ同じ選手が選ばれていて、スタメンについてもほんの少しのポジションチェンジやGKのスタメン変更などありましたが、やはり積み上げてきたものの大きさが違う懐の深い代表チームでした。もちろん自分たちのやりたいサッカーはあると思うけど、対戦相手だって全力で勝ちに来てるのだから全ての試合で思い通り試合を運べるわけでもないし、一つの試合のなかでも相手の時間帯になってしまう時もある。それらを全て仕方がないこととして受け止め、その時にできる最大限の努力をして最後まで諦めない。特にワールドカップ優勝という成功体験をすでにしているチームだから、諦めない先で何が得られるか、耐え続けて相手の気が緩んだ時に何ができるかを知っているチームの強さのようなものを感じました。


ワールドカップの時点では個人的に評価の低かった大儀見(当時は永里)さんでしたが、今回のロンドンでは利いてましたね。彼女がいないときに前線でまったくボールが落ち着かない。一人でも何秒間は確実に時間が作れるし、ポストプレーも距離の短い落としだけではなく、サイドチェンジのような大きな視野の広いプレーもできる。ゴール前の決定力の部分では永里さん時代の面影を感じる部分もありましたが、この大会のなでしこの中でMVPを選ぶなら私は大儀見さんを選びます。今回特に押し込まれている試合での存在感の大きさは群を抜くものがありました。


チーム全体としてはワールドカップの時に比べてやや運動量が少ないかなと感じる時間帯もありましたが、それでも中2日の6連戦を考えれば責めることはできません。攻撃の時も守備の時も数的優位を作ってフィジカルで勝る相手に対応していくのがなでしこの基本かもしれませんが、さすがにこの日程では押し上げができない時もあった。攻撃については一人でなんとかできる選手が生まれそうな予兆はありますが、守備の時に特に強引にドリブルを仕掛けてくる相手に対してディレイするだけではなく体で止めてイエローカードは覚悟するみたいなもう少しずるいプレーも必要なのかな。フェアプレーがなでしこの信条なのは分かりますが、やはり強引にこじ開けてくる相手を止めるには数的優位だけではどうにもならない時もあるし、特にボランチセンターバックに力強さを求めたい。


もう少し交代選手が明確に役割をこなせればとは思いましたが、それでも交代の手は男子より有効に機能していたと思いますし。決勝の最後の時間帯で岩渕さんがあれを決めていれば歴史が変わったかもしれませんが、相手のGKを考えるとこれも責めることはできない。これからのなでしこリーグの試合でシュートを撃つときに、あのGKをぶちぬくことを常に考えてプレーして次の機会にはソロさんの守るアメリカゴールをこじ開けて欲しいと願っています。
澤さんはもちろんのこと川澄ちゃんや大野さん、岩清水さんにはすでに貫禄すら感じられるし、鮫島さんは相変わらず可愛かった。表彰式の丸山さんにはちょっと引くものもありましたが、負けてなお魅力を放つなでしこは日本の誇りであり日本のイメージを変える存在であると思います。本当におめでとうございました。

ロンドンオリンピック サッカー日本代表 男子

ブラジル対メキシコという日本になじみのある2カ国の決勝戦が終わって、ロンドンオリンピックのサッカー競技が幕を閉じました。まだオリンピックの閉会式は終わってないけど、開会式前から競技が始まった日本サッカーを中心に見続けてきたので、すでにオリンピックが終わったような気持ちになっています。この面白かったロンドンオリンピックの日本サッカーについてちょっとだけ。


まずは男子日本代表。下馬評は圧倒的に女子の方が高く、ほとんど期待されていなかった男子サッカー。欧州への移動についても男子がビジネスクラスで女子がエコノミーだったことで悪い意味で注目されてしまいましたが、ふたを開けてみれば期待以上の大活躍でした。五輪予選を通じて迷走しつづけた関塚ジャパンでしたが、最後の最後で帳尻を合わせてくれた印象です。ただ、帳尻を合わせたチームの常で戦い方の幅の広がりを作る時間はなかった、スタメンの11人は魅力的なチームを作ることはできたけど、選手交代してギアチェンジができるとか、この相手にはこの戦い方を選択するとか、ほとんど融通が利かないチームでしたね。
でも、五輪予選を通じてチームを作ることができなかった以上、オリンピックを考えるとこれがいっぱいいっぱいだったと思います。最終的にOAでDFラインの強化を図り、何とか形にはなりましたけど最後にそこが崩れたら跳ね返す力は残っていなかった。


試合日程的に初戦で一番強いだろうと思われる相手と当たるというのは、やはりそこにフィジカルだったり戦い方だったりのピークを持ってこなければならないわけで、後半失速するのは責められません。グループリーグの初戦で大敗でもしてしまったら、中2日の連戦であっというまに沈んでしまう。それを考えたら初戦は最低でも引き分けにしたいし、あわよくば勝ちたい。スペインは強豪国とはいえグループリーグの初戦に標準を合わせてくるとは思えないから油断もある。それを考えれば守備を固め前線からチェイスをかけいいところで奪えたらシュートカウンターを仕掛ける。相手が前に出てきて相手のDFラインの裏に広大なスペースがあるから、永井の走力も生きる。ハマりましたねぇ、面白いようにハマりました。あのスペインの慌てっぷりを見ているのは痛快でした。まんまと罠にはめた感じです。


でも、冒頭にも書いたけどおそらくスペインに標準を合わせただろう日本代表はスペインを罠にはめたけど最終的には自分たちも自分たちの仕掛けた罠にハマってしまいました。スペイン、モロッコ、ホンジェラス、エジプトと4試合を戦った後のメキシコ戦では、永井の走るスペースは与えてもらえなかったし、メキシコのボールのつなぎ方のうまさにもやられて効果的にボールを奪うこともできなかった。また、考えられた相手のセットプレーから初失点を喫しさらにミスから逆転を許してからは、余裕を持って守る相手の守備をこじ開けることはできなかった。これはガチ守り縦ポンサッカーの韓国戦でも同じ状況になりましたが、そもそも引いて守る相手を崩そうとしたメンバーを集めたわけでもないので、しょうがないっちゃーしょうがない。五輪予選を通じてほぼ同じメンバーで同じような戦い方をしてチームを育ててきたような状況なら、相手が前に出てきたときや引いてきたときなど、様々なオプションの引き出しをつくることもできただろうけど、残念ながらそこまではできなかった。それがこのチームの限界でした。


最後の試合は残念な形で終戦してしまいましたが、それでも前半の4試合からメキシコ戦の先制までは充分に夢を見せてくれました。永井のチェイシングからのボール奪取や清武、大津、東が絡んだ時の自由自在なポジションチェンジなど、見ていてもとても楽しかった。あと出場時間は短かったけど、酒井高徳も可能性を感じさせてくれました。OAで主将を務めた吉田や徳永なども守備の安定をもたらしチームに落ち着きを与えました。その他ボランチコンビも面白かったけど、やはり中2日の6連戦は体力を奪うとともに時間の経過により判断力も奪っていったのかなと思います。中盤の扇の要みたいなポジションにOAがもう一人いたらどうだったかなと思わないこともありませんが、それでも予想以上の活躍を見せてくれて6試合最後までメダルの夢を見せてくれた男子日本代表には胸を張って帰ってきてもらいたい。優勝したチームに負けたんだから、しょうがないし、あとどれくらい力があれば優勝できるのか実感として得たのだからメダルは取れなかったけどこれからのサッカー人生に大きな財産が得られたはずです。本当にお疲れさまでした。

ヴェルディ - 千葉

42試合のうちの1試合とは分かっていても、痺れる試合でした。神頼みはしないタイプなんだけど、PKの場面で祈ったのはどれくらいぶりだろう。


あと1試合を残して長いJ2リーグ戦の前半が終わる20節は思いがけず1位千葉と2位東京ヴェルディの首位を賭けた試合となってしまいました。本当は首位と勝ち点3差ぐらいの3位あたりにつけておいて、シーズン終盤で追い込むというのが一番プレッシャーがかからないような気もしますが、目の前にチャンスがあるなら掴みたい。過去のJ2リーグ戦を考えても19節までに6敗もしているクラブが首位に立てるなんてあまり思い浮かばないけれど、今年は上位が混戦で思わぬチャンスが転がり込んできた、という感じです。ただの1試合なんだけど、重い試合でした。


試合そのものは90分を通してほとんどが千葉の試合。やりたいことをピッチ上で表現できていたのは千葉だと思います。ヴェルディは千葉の高い位置からのプレスに圧倒されて、いつもの内容の試合はほとんど出来なかった。ちょっとした時間帯に千葉のプレスが緩んでヴェルディがボールを持てていたときもありましたが、いつのまにかプレッシャーを掛けられてボールがGKまで戻されてしまったりと、まったく思うようにはいきませんでした。
でも、ここぞというチャンスを決めたのはヴェルディだった。


今年のヴェルディの試合を随分とスカパーで見ていますが、自分達のセットプレーに関しては全然得点の予感を感じない。それなのに相手のセットプレーに関してはロシアンルーレットのように何回かに1回は必ず失点してしまう。自分達の攻撃時のセットプレーは淡淡と見て、相手のセットプレーには諦観する。(諦観 = あきらめ、悟って超然とすること) これが今年のヴェルディでした。でも、今日は違った。最初のコーナーキック杉本健勇の高さと位置取りで制し、千葉のセットプレーはことごとく跳ね返した。「どうしちゃったの?」という感じでした。2点目のPKゲットは阿部の予測的位置取りとファーストタッチからの切込みで勝負ありって感じでした。PKを阿部が蹴るときは前節のやり直しが頭に浮かんで思わず決めてくれと祈ってしまったけど。その後の右サイドを森の突破からのクロスを、中央に飛び込んだ杉本健勇がヘディングでクロスバー直撃したシュートを決めてくれれば言うことなしの試合だったけど、まあそんなにうまくいくわけはないですね。


試合終盤に千葉のオーロイが出てきてからは、もう全てを運命に委ねるような気持ちで見てました。あと10分早く、2点差になった直後にオーロイ投入だったらやばかったかもしれませんが、1点はオーロイに取られたものの残り時間に救われました。危なかった。自分がヴェルディの監督だったら、オーロイが出てきたときに途中交代で投入していた巻をマンツーマンでマークにつけていたかもしれません。それぐらいやばかった。


千葉は全員が良く走るいいチームでした。これだけプレスを掛けたら失点が少ないだろうし、あれだけ走ったら数的優位を作りやすいだろうし、本当に良いチームだった。ピッチサイド解説の野々村さんも言っていましたが、ヴェルディには差のつけられる選手が2人(杉本、阿部)いた、それが全ての試合だったと思います。千葉の方が完成度の高い良いチームだったけど、個の力が瞬間際立ったのはヴェルディだった。
42試合のうちの20試合が終わっただけなのでこの後どうなるか分かりませんが、今まで上位同士の対決にはことごとく負けていた今年のヴェルディなのでまずはようやく一山越えたって感じです。まだまだたくさん山はあるけど。